2022年3月1日火曜日
世界経済、ロシア排除加速
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2847N0Y2A220C2000000/?unlock=1
世界経済、ロシア排除加速 BP撤退・ダイムラー提携解消
ウクライナ侵攻
2022年3月1日 1:15 (2022年3月1日 5:24更新) [有料会員限定]
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高島宏平蛯原健
27日、ベルリンでロシアの軍事侵攻に抗議する市民ら=ロイター
ウクライナに侵攻したロシアを世界経済から排除する動きが広がってきた。英石油大手BPがロシア事業から事実上撤退するほか、商用車大手の独ダイムラートラックホールディングはロシア企業との提携を解消する。各国の機関投資家はロシアの株式や債券を売却する。金融制裁で通貨ルーブルは急落し、ロシア中央銀行は通貨防衛に追われた。中国がどこまでロシア経済を支援するかが今後の焦点になる。
シェル、「サハリン2」から撤退
英石油大手シェルは28日、ロシア極東シベリアの石油ガス開発事業「サハリン2」から撤退する方針を発表した。ロシアのガス大手ガスプロムとの合弁を解消する。サハリン2はガスプロムが約50%、シェルが約27.5%出資している。日本の三井物産が12.5%、三菱商事が10%それぞれ参加し、液化天然ガス(LNG)の供給元として日本のエネルギー安全保障上も重要な存在。シェルが撤退を決めたことで日本の2社の対応が焦点となる。
【関連記事】英シェル、「サハリン2」撤退へ ガスプロム合弁解消
英BPは27日、19.75%を保有するロシア石油大手ロスネフチの株式を売却すると発表した。ロシアでの合弁事業も全て解消する。バーナード・ルーニー最高経営責任者(CEO)らはロスネフチの取締役を辞任した。
北欧石油最大手エクイノール(ノルウェー)も28日、ロシアの合弁事業からの撤退に着手すると発表した。アンダース・オペダルCEOは「この状況で我々の立場は維持できない」と説明した。
独紙ハンデルスブラットによると、独ダイムラートラックはロシアの装甲車大手カマズとの提携を解消する。民生用の商用車で提携してきたが、合弁会社での生産や部品の供給をやめる。
スウェーデン高級車大手、ボルボ・カーは28日、ロシアへの自動車の出荷を停止すると発表した。「ロシアとの取引に伴う潜在リスクを考慮した」という。
【関連記事】ロシアの自動車生産、停止相次ぐ ボルボやダイムラー
スイスは資産凍結、プーチン氏も対象に
一方、スイス政府は28日、ロシアに対し欧州連合(EU)と同じ内容の制裁を科すと発表した。プーチン大統領の個人資産を制裁対象に含み、スイスにある資産を凍結するなどする。ロイター通信によると、スイスの銀行にはロシア国籍の預金者が2020年時点で104億スイスフラン(約1兆3千億円)近くを保有している。中立を掲げるスイスだが、ロシアに対して毅然とした態度を取ることを求める世論が国内外で強まっていた。
金融市場で動向が注目されるノルウェー政府系ファンドは、ロシア向け新規投資をやめ、保有資産を売却する検討に着手した。最大手銀行ズベルバンクやガス大手ガスプロムなど47銘柄の株式を保有していた。オーストラリアの政府系ファンドもロシア市場の投資残高を縮小する方針を示した。
貨物や小包の国際輸送を手がける米UPSと米フェデックスはウクライナ発着の全ての配送と、各国からロシアへの輸送業務を中断した。両国への安全な輸送業務を続けるのが難しいと判断した。米テキサス州のアボット知事は26日、外食と小売店の業界団体にロシア産の食品や飲料を取り扱わないよう要請した。
企業や投資家がESG(環境・社会・企業統治)を重視する流れは近年強まっている。ロシアで投資や事業を続けることの合理性を説明できなくなる恐れがある。
米欧日は国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの一部銀行を締め出す方針を打ち出した。国際決済網であるSWIFTを利用できなくなれば、ロシアに拠点を置く企業は海外との決済が難しくなり、事業継続に支障を来す。
【関連記事】ロシア制裁「銀行で取り付け騒ぎも」 国際金融協会
ルーブル急落、最安値更新
外国為替市場ではルーブルが対ドルで前週末比3割安い1ドル=119ルーブルを付け、最安値を更新した。ルーブルの買い手が乏しく、取引自体も大幅に減ったとみられる。
ロシアの航空機も各国の領空から排除されている。ロシア系企業が所有するか、ロシアに登録する航空機が主な対象だ。欧州連合(EU)とカナダが乗り入れを禁じたほか、ロイター通信によると米国も検討中だ。
領空排除により、リース事業者はロシアに貸し出し中の航空機を回収できない恐れがある。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、欧州系企業だけで最大50億ドル(約5800億円)分の機材がロシアにある。
ロシアは資源以外にめぼしい産業がなく、世界の国内総生産に占める比率は2020年で1.8%にとどまる。厳しい制裁に耐えられるかは、ロシアと関係が近い中国の出方がカギをにぎる。
中国の習近平(シー・ジンピン)指導部はロシアによる侵攻を支持することはしないが、制裁で疲弊したロシア経済を支える方針とされる。
2月4日の中ロ首脳会談ではロシア産小麦の輸入拡大や年100億立方メートルの天然ガスの追加輸入で合意。21年12月にはロシアからの原油の輸入量が1年2カ月ぶりにサウジアラビアを上回った。
中国外務省によると、王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は26日、ドイツのベーアボック外相と電話協議し「問題解決の手段として制裁を用いることには賛成しない」と伝えた。(井上航介)
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