2024年11月3日日曜日

日本政界に「異例の大変動」 衆院解散・総選挙の結果

日本政界に「異例の大変動」 衆院解散・総選挙の結果
石破首相率いる自民党は衆議院で過半数を失った(27日、自民党本部

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画像説明,石破首相率いる自民党は衆議院で過半数を失った(27日、自民党本部)

シャイマ・ハリル、BBC東京特派員

日本の選挙というのは通常、波乱がなく安定していて、退屈なものだ。ところが今回の衆議院の解散・総選挙は、そのどちらでもなかった。

昨年に発覚した政治資金スキャンダルは与党・自民党の幹部や閣僚を巻き込み、党のイメージを失墜させ、国民の怒りを買った。

「完璧な嵐」ともいえる事態だった。国民がインフレと物価高騰、上がらない給料と経済の停滞に苦しむ中、自民党議員たちは政治資金パーティーで集めた大金を手にしていたのだ。

そして結局、事態に辟易(へきえき)とすると同時に激怒する有権者は27日、強力なメッセージを発して、自民党を投票箱で罰した。有権者は実にあぜんとするほどの打撃を、自民党に与えた。1955年以来ほぼ継続的に政権を担ってきた政党が、強力な権限をもつ衆議院で、単独過半数を失ったのだ。

しかし、明確な勝者もなかった。国民は自民党の代わりを探していたが、分裂する野党は有力な代わりになれなかった。

大きな痛手を負いつつも、自民党は191議席を確保し、最大野党・立憲民主党の148議席を上回った。

「この選挙を決めたのはどうやら、腐敗して汚職にまみれているとみなす政党や政治家に辟易としていた有権者だ。しかし、有権者は新しいリーダーの登場を求めたわけではない」。神田外語大学で講師を務めるジェフリー・ホール氏はこう話す。

とはいえ、この国の従来の指導層がどうなるのかは不透明だ。自民党は連立する公明党の24議席を合わせても計215議席で、与党として過半数(233議席)を越えられなかった。公明党は9月に党代表に就任したばかりの石井啓一氏が落選するなど、公示前から8議席を失った。

「非常に厳しい審判をいただいた」と、自民党総裁の石破茂首相は認めた。石破氏は激戦の党総裁選を勝ち抜き、今月1日に首相に就任したばかりだ。

「自民党はもっときちんと反省をしなさい、もっと国民の意思に沿った政党になりなさいという強い意志が出た」。石破氏はこうした認識も示した。

自民党本部で報道陣の取材に応じる石破茂首相(27日)

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自民党に対する不満の高まりと支持率の急落を受けて、前任の岸田文雄前首相は退任に追い込まれた。後任の石破氏が党を率いて選挙に臨めば、自民党を救えるかもしれないという期待があった。

とはいえ、石破氏が今月初めに解散とスピード選挙の実施を発表したのは賭けだったし、それは裏目に出た。

石破氏も自民党も、国民がどれほど怒っているかを見くびっていた。そしてそれ以上に、国民が自分たちの怒りを行動で示す用意があるという、その意思を見くびっていた。

自民党が政権を維持するには、選挙で争ったばかりの他党とも連立を組む必要がある。生き延びるには、交渉して譲歩しなくてはならない。自民党が、大きく劣勢に立たされた今の状態で他党との連立を模索するのだ。

これがいかに珍しい事態か、誇張してもし過ぎることはない。日本の政界で自民党はこれまで常に、安全で安定した地位を享受していたのだから。

自民党には確実な統治実績がある。1993年と2009年には野党が政権を握ったが、いずれの政権もよい成果を出せずに終わった。

2012年に自民党が政権に返り咲いてからは、争う相手がほぼいない状態で、次々と選挙で勝利を重ねた。国民は長らく、現状を致し方ないものと受け入れていた。そして野党は今なお、国民を説得できずにいる。

有権者の1人は、自分たち日本人は非常に保守的だと思うと、投票の数日前にBBCに語った。

自分たちで変化を起こそうと挑戦するのは非常に難しいと、66歳のこの女性は付け加えた。自分たちが保守的になりがちなのは、過去の政権交代で結局は何も変わらなかったからだと。

女性は誰に投票するか迷っていた。特に今回は、自民党が選挙資金パーティ―をめぐる汚職スキャンダルに直面していたためだ。それでも、これまでずっと票を投じてきた自民党に、今回も同じように投票するつもりだと話していた。

日本社会の高齢化は、政府にとって最重要課題のひとつだ

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画像説明,日本社会の高齢化は、政府にとって最重要課題のひとつだ

最大野党の立憲民主党は、今回の選挙で大きく躍進した。しかし、この結果は有権者が野党を支持したというよりも、自民党への有権者の怒りのあらわれだという見方がある。

前出のホール氏は、政治家の責任を問いただしたい気持ちが有権者にはあるものの、国政を自民党以外の誰に託していいのか、「ほかに誰もいないと、有権者は内心ではそう思っている」のだと指摘する。

その結果、日本に何が残ったかというと、弱体化した与党と分裂した野党だ。

日本は長い間、政治的安定を体現する道しるべのような存在だとみられていた。投資家にとっては安全な避難先で、アメリカにとっては緊張関係が増すアジア太平洋地域において信頼できる同盟国だと。それだけに日本の不安定化は、日本国民だけでなく近隣諸国や同盟国にとっても懸念材料となる。

加えて、日本国内においては、経済を立て直すことも、国民の給与を引き上げることも、急速に高齢化の進む国民の福祉を改善することも、不安定な連立政権ではなかなか実現しにくい事態となる。

さらに、政治に辟易とする国民の信頼と尊敬を取り戻すのは、それに輪をかけて難しいはずだ。

(英語記事 Japan’s politics gets a rare dose of upheaval after snap election 


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