2022年3月2日水曜日

ロシアのウクライナ侵攻をめぐる国連総会の緊急特別会合

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010K90R00C22A3000000/?unlock=1 【ニューヨーク=白岩ひおな】ロシアのウクライナ侵攻をめぐる国連総会の緊急特別会合が2月28日、開幕した。常任理事国のロシアの拒否権で安保理の機能が低下していることを踏まえ、西側各国がロシアへの圧力を高めるために開催を働きかけた。安保理の要請による緊急特別会合は40年ぶりで、ロシアによる侵攻を非難する国際世論をどれだけ高められるかが焦点となる。 数日に及ぶ会合では110カ国超が演説する予定で、その後決議を採択する見通しだ。28日にはウクライナとロシアを含む45カ国が演説した。「ウクライナが生き残れなければ、次に民主主義が陥落しても不思議ではない」。ウクライナのキスリツァ国連大使はこう訴え、ウクライナ侵攻をめぐる決議案に賛成票を投じるよう各国に訴えた。 国連総会の緊急特別会合は、25日の安保理会合でロシアが拒否権を発動し、ウクライナ侵攻をめぐる決議案が否決されたため、安保理での採決を経て招集された。1950年の朝鮮戦争時に旧ソ連の拒否権を抑える狙いで国連総会で採択された「平和のための結集」決議に基づく措置だ。安保理の意見が一致せず、侵略への対応など国際社会の平和と安全の維持が困難になった場合に講じられる。 安保理で採決するか、国連加盟国の過半数の賛同を経て招集される。招集された例は今回を含めて11回しかなく、安保理による招集は82年以来だ。当時、イスラエルによるゴラン高原の併合に対し、イスラエルを非難する決議案が米国の拒否権発動で廃案になったことを受けて招集された。総会決議に法的拘束力はないが、常任理事国には拒否権はなく、ロシアが反対票を投じても採択を妨げられることはない。 「プーチンの戦争を終わらせろ」「今すぐ制裁を」とメッセージを掲げるトラック(28日、ニューヨークの国連本部前)=ロイター 焦点は、採択にあたってより多くの加盟国の賛成票を集め、国際社会におけるロシアの孤立を際立たせられるかどうかだ。日本経済新聞が28日に入手した決議案は、核戦力の準備態勢を強化するロシアの決定を非難し、ロシア軍の即時無条件の撤退を求めている。 米欧など各国は働きかけを強める。「棄権は力こそが正しいという主張を認めることになる、不名誉な選択肢だ」。フランスのドリビエール国連大使は28日の演説でクギを刺した。オーストリアのマルシク大使も「誠実で良き友は、友が違法かつ邪悪な行為に手を染めたとき、言うべきことを言い、なすべきことをなすものだ」と述べ、ロシアと関係の深い国にも歩み寄りを求めた。 ただ、各国の立場にはなお隔たりがある。インドのティルムルティ国連大使は28日の演説で「外交の道に戻るほか選択肢はない」と主張。決議案への言及は避けた。インドは2021年12月にロシアと10年間の軍事協力を締結したばかりで、同国産の兵器を大量に調達している。 中国の張軍国連大使は「新たな冷戦をあおっても何も得られない」と発言する一方、「一国の安全保障が他国の安全保障を犠牲に成り立ってはならない」と強調した。「状況はわれわれが望まないところまで発展している」と述べ、全ての当事者に自制と外交努力を促した。 ロシアを支持するシリアのバッサム・サバーフ大使は、ウクライナでのロシアの行動を「正当な安全保障上の懸念」に基づくものだと擁護した。各国による経済制裁を念頭に「一方的な強制措置は火に油を注ぎ、地域の人々に害を与えているだけだ」と非難する。 加盟国の温度差は、14年のロシアによるクリミア半島への侵攻時の構図を想起させる。当時、通常の国連総会の会合で「ロシアによる併合は無効」とする決議が賛成多数で採択された。賛成票を投じたのは米英やトルコなど100カ国。ロシアやシリアなど11カ国は反対し、中国やインドなど58カ国は棄権した。当時の非難決議と比べて今回、どれほど賛成票が増えるかも注目点になる。

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