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東京都は住宅の窓やドアを断熱性能の高い製品に取り換える断熱リフォームへの補助事業を大幅に拡充する。窓の補助対象は2022年度で6万戸と、20~21年度実績の3倍強に広げる。光熱費の上昇が続き、冷暖房の使用を抑えられる断熱リフォームへの関心が高まっている。都は脱炭素を進める好機とみて住宅の省エネ化を後押しする。
都は断熱リフォームに対する補助事業を20年度に始めた。21年度までの2年間で窓は約1万8000戸、ドアは約6000戸の利用があった。22年1月に6分の1の補助率を3分の1に引き上げ、窓とドアで計58万円だった補助上限額も2倍の計116万円に見直した。
22年度は補助率と補助上限額は据え置きつつ、窓で6万戸、ドアで5万戸を対象に改修を支援する。戸数ベースの事業規模は20~21年度実績比で窓が3倍強、ドアが8倍強に膨らむ。6月下旬から申請を受け付ける。
都内には戸建てと集合住宅合わせて人が住んでいる住宅が計680万戸あるが、8割は窓が断熱性能の低いガラス1枚の仕様となっている。戸建て住宅では室内と屋外の熱の出入りの6~7割が窓経由とされる。内窓の装着や複層ガラスへの交換は冷暖房効率の改善に直結するだけでなく、壁に断熱材を入れるよりも工事が簡便で済む利点がある。
戸建て住宅に比べて気密性が高い鉄筋コンクリート造りのマンションでも、断熱リフォームは有効だ。1984~85年築の江東区の大規模マンション「プラザ元加賀」は20年に全673戸で窓とドアを交換した。管理組合理事長の松野秀雄さんは「隙間風や結露がなくなり、冬も暖かく過ごせるようになった。遮音性も驚くほど高まった」と話す。
新型コロナウイルスの感染拡大後、断熱リフォームへの関心は急速に高まっている。建材大手のYKKAPの鈴木修一・ビル本部改装推進部長は「在宅勤務をきっかけに、自宅の遮音性や断熱性などに目を向けた人が多い」と話す。22年3月期のリフォーム向け売上高は前の期比2割増と、新築向けの1割増を上回る好調ぶりだった。
物価上昇が加速する中、電気やガスといった光熱費の節約志向も強まっている。都は断熱リフォームを進める好機とみて、22年1月に補助率を引き上げた。都環境局によると、棟単位のマンションからの申請が大きく伸び、1~3月の窓改修の申請は月平均2500件とそれまでの3.6倍に急増したという。
都内で約1000のマンション管理を手掛ける長谷工コミュニティ(東京・港)は修繕期を迎えたマンションに断熱リフォームを提案している。「補助金の拡充は、予算との兼ね合いで迷っている管理組合の背中を押す効果が見込める」(同社)
都は30年にカーボンハーフ(温暖化ガス半減)を政策目標に掲げる。ただ、都内の排出量の3割を占める家庭部門の削減が進んでいない。都は省エネ性能を高めた新築住宅の普及に加えて、既存住宅の断熱性能向上が目標達成に欠かせないとみる。補助枠の拡大に加え、22年度中に住宅メーカーやリフォーム事業者などと協議体を立ち上げ、住宅所有者向けの相談窓口の設置や補助制度の普及啓発などを加速する。