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【ワシントン=芦塚智子】米下院民主党は4日、トランプ前大統領が在任中に一族のビジネスを通して外国政府から780万ドル(約11億円)以上を受け取っていたとする報告書を公表した。中国からの受領が最も多かった。
民主は明確な憲法違反だとして、11月の大統領選で返り咲きを目指す前大統領への批判を強める構えだ。
報告書は、下院監視・説明責任委員会の民主議員らが、前大統領の会計事務所や米証券取引委員会(SEC)から入手した記録を基にまとめた。
報告書によると、前大統領の在任中に少なくとも20カ国の政府や国営企業が首都ワシントンやラスベガスのトランプ・インターナショナル・ホテル、ニューヨークのトランプ・タワーなどに合計780万ドル以上を支出していた。
2023年に下院の多数派を奪回した共和党が会計事務所に対する記録の提出要求を止めたため「780万ドルはほぼ確実にトランプ氏が外国政府から違法に得たカネのほんの一部に過ぎない」と指摘している。
支出が最も多かったのは中国で、在米中国大使館や中国国有の大手銀行である中国工商銀行(ICBC)、海南航空などが合計約557万ドルを支払っていた。サウジアラビアが約62万ドル、カタールが約47万ドル、クウェートが約30万ドル、インドが約28万ドルと続いている。
米憲法は大統領が議会の了承を得ずに外国政府からいかなる贈与や報酬も受け取ることを禁じている。
報告書は、中国工商銀行に北朝鮮との関係が疑われた際に前大統領が制裁を科さなかったことや、サウジ人の著名記者殺害事件で皇太子の関与を指摘した米情報機関の分析に前大統領が疑問を呈したことなどを挙げ、外国政府らによる支出との関連性を指摘した。
「トランプ大統領は繰り返し自身の金銭的利益や外国の富裕層や権力者の利益を公益より優先した」と批判し、憲法違反にあたると指摘した。
下院共和はバイデン大統領が次男ハンター氏の海外ビジネスに不正に関わっていた疑いがあるとして弾劾訴追に向けた調査を始めており、民主の報告書はこれに対抗する狙いもある。