2022年2月25日金曜日

エルピーダの教訓 破綻から10年

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC211XA0R20C22A2000000/?unlock=1 半導体の国内製造、海外勢も存在感 誘致の果実は人材 エルピーダの教訓 破綻から10年(下) エレクトロニクス 2022年2月25日 2:00 [有料会員限定] 旧エルピーダの工場はマイクロンの中核拠点の一つになっている(広島県東広島市) JR西条駅(広島県東広島市)から車で約10分。東西に長く延びる工場の全景が徐々に見えてくる。エルピーダメモリから引き継がれた米マイクロン・テクノロジーの広島工場だ。マイクロンを筆頭に、国内の半導体製造は多くの海外資本に支えられるようになった。 【前回記事】エルピーダ破綻、巨額投資で官民協力に綻び 特需逃す 「日本は先進的な開発で重要な役割を果たしており、(次世代DRAM技術の)1Betaなど技術的リーダーシップの維持にまい進する」。マイクロンのエグゼクティブ・バイスプレジデント、マニッシュ・バーティアはこう強調する。同社の対日投資は過去3年で70億ドル(約8000億円)、研究開発投資はエルピーダ時代から5割増えた。 エルピーダからマイクロンに移った元幹部は「DRAMの設計、プロセス開発のトップは日本人が務めた。国籍に関係なく実力ある人材が起用されている」と語る。「資金の心配もなくなり、拠点も残った。結果的には(傘下に入って)よかったのだろう」 マイクロンをはじめ日本国内にある多くの半導体工場に海外企業が参加する。三重県、岩手県では、キオクシアが米ウエスタンデジタルと生産投資を折半し、NAND型フラッシュメモリーの工場を運営。2014年には富山県にあるパナソニックの半導体工場を、イスラエルの製造受託大手タワーセミコンダクターの子会社が引き継いだ。 国内で大型投資を続けながら半導体のビジネスを担う日本企業はソニーグループやキオクシアなどに限られる。それだけに製造基盤を持つ上で海外企業は欠かせないプレーヤーだ。日本の半導体産業では「ヒト」「モノ」「カネ」の国境は溶けつつある。 企業の国籍を問わず、製造拠点が国内に立地する意義は小さくない。マイクロンが工場を構える東広島市の産業部長、鈴木嘉一郎は「数千人規模の雇用に加え、製造装置など関連企業も集積している。上下水のインフラ、サービス業など地域経済へのメリットは大きい」と話す。 TSMC誘致、「議論が楽観的、希望的」 台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県進出も、画像センサーや車載向けなどの半導体を安定して確保する観点で重要となる。熊本工場では1700人のエンジニアを雇用する計画という。茨城県つくば市には先端製造技術の研究開発を担う拠点を開く。 台湾積体電路製造(TSMC)の新工場建設予定地(熊本県菊陽町) ただ、拠点誘致がそのまま日本の半導体産業の再興につながるわけではない。東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人は「TSMCの誘致についての議論が楽観的、希望的になりすぎだ」と警鐘を鳴らす。熊本県内の装置企業首脳も「TSMCは従来のサプライヤーから調達をするだろう。直接の恩恵は大きくない」とこぼす。 TSMCの誘致を奇貨として日本での産業基盤を強くするためには何が必要か。経済産業省情報産業課長の西川和見は「設備にしても開発にしても『カネ』と『ヒト』だ。企業も政府も判断すれば資金は出せる。ただ、支える人材を育てる、集めることなしには動き出さない」と語る。 九州では人材育成の準備を急ぐ。半導体のエンジニア需要に備え、九州の8つの高等専門学校について半導体のカリキュラムの策定を始めた。熊本大学では4月、大学院先端科学研究部に「半導体教育・研究センター」を開設し、学内外の人材で研究開発を加速する計画だ。 ソニーグループの半導体子会社から熊本大の特任教授に転じた鈴木裕巳は「製造プロセスから、アーキテクチャー(基本構造)の設計まで多くの人材が必要になる」と指摘する。 細る日本の半導体技術者 日本の半導体産業は、事業の撤退・縮小を続けてきた結果、再興の担い手となる人材も減ってきた。総務省によると「電子部品・デバイス・電子回路製造業」で25~44歳の従事者数は10年の38万人から21年には24万人に減少した。 「半導体工場の立ち上げや運営に精通したベテランエンジニアがまだ在任、在籍している。しかし、5年後以降は、そうした人材はいなくなってしまう」。電子情報技術産業協会(JEITA)は、21年に国に出した提言で危機感をあらわにした。 人材層が細った結果、半導体エンジニアは争奪戦の様相だ。リクルートによると21年の求人件数は20年から6割増。同社で採用支援を手掛ける井上和真は「競争率はさらに上がるだろう」と話す。TSMCが熊本県の合弁会社で出した求人の要件は23年4月入社の学部卒で28万円。国内装置メーカー大手が博士出身向けに提示する初任給を上回る。新卒、中途ともに人材を巡る競争は厳しさを増していく。 マイクロンを筆頭に、日本の半導体産業が輩出してきた人材は、海外企業が日本に拠点を持つ動機にもなった。ただ、日本で働くエンジニアや学生といったタレントが海外に抑えられていては、かえって競争力を弱めかねない。熊本大の鈴木は「しっかりとした基盤を持つ企業と、好奇心を湧かせる研究開発があれば働きたいと思う学生も増えていく」と訴える。 海外資本企業の誘致を足がかりに人材の裾野を広げ、日本の半導体産業も選ばれる企業に変わる。半導体再興を実らせるには、「ヒト」が欠かせないピースとなる。 =敬称略 (江口良輔)

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