2022年2月25日金曜日

エルピーダ破綻、巨額投資で官民協力に綻び

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC081ID0Y2A200C2000000/?unlock=1 エルピーダ破綻、巨額投資で官民協力に綻び 特需逃す エルピーダの教訓 破綻から10年(上) エレクトロニクス 2022年2月24日 2:00 [有料会員限定] 東京地裁に会社更生法の適用を申請し、記者会見するエルピーダメモリの坂本幸雄社長(2012年2月、東証) 2012年2月27日、電機各社の半導体部門が合流し生まれたエルピーダメモリが会社更生法を申請した。1980~90年代に世界を席巻した半導体メモリー、DRAMの担い手は米大手マイクロン・テクノロジーの傘下に入る。経営破綻から10年がたった現在、日本の官民は半導体産業の立て直しに動き始めた。エルピーダの破綻から半導体再興への教訓を探る。 「1500億ドルを投資し、業界をリードする技術革新を続けていく」。21年、マイクロン最高経営責任者(CEO)のサンジェイ・メロトーラは今後10年で研究開発と生産能力の拡大に約17兆円を投じる計画を表明した。中核の一つは旧エルピーダの拠点や人材だ。 「生き残っていれば、世界と戦えるメモリーメーカーが日本に生まれていただろう」。エルピーダを破綻させた社長の坂本幸雄は嘆息する。 DRAMで一時2割近いシェアを確保したエルピーダ。06年に台湾企業と合弁会社を設立し、両社で1兆6000億円規模の投資計画を掲げるなど積極策を進めたが、弱い財務基盤が裏目に出る。市況の荒波に加え、リーマン危機、1ドル=80円前後の超円高と逆風が続いた。純有利子負債は09年に一時、自己資本の4倍にあたる5000億円近くに膨らむ。11年末には約2900億円(1.3倍)まで圧縮したが、政策や金融による援護射撃は続かなかった。 欠いた長期展望 エルピーダの破綻劇は、官民が巨額投資を伴う長期戦に耐えられなくなった構図だ。開発競争が激しく、製造に必要な投資が兆円単位に膨らむ一方、市況の変動は大きい。投資を担える企業の規模と政策支援がなければ、競争から退場を迫られる。 リーマン危機時にエルピーダは、産業活力再生法を利用した公的資金の注入と、日本政策投資銀行と大手行による1100億円の協調融資を受けた。その返済期限間近の11年末、支援継続の条件に資本増強を迫られる。 坂本はマイクロンとの提携を模索し、交渉は順調だったが、同社で旧知のCEO、スティーブ・アップルトンの突然の事故死で頓挫。米半導体、グローバルファウンドリーズとの提携も不調に終わり万策が尽きた。借り換えめどはたたず更生法申請に追い込まれた。「なぜ6カ月待てなかったんだ」。マイクロンによる買収完了後、坂本は同社幹部に問われ唇をかんだ。 当時メモリー市場の潮目は変わりつつあった。スマートフォン需要の拡大だ。汎用品だったDRAMもスマホ向けは個別の仕様対応が必要で、付加価値を高めていた。エルピーダもモバイルDRAMの受注が膨らみつつあるタイミング。13年には安定して黒字を確保できるようになっていた。 「DRAMの技術や最終製品の動向を、当局や金融機関が十分に捉えられていなかった」。長年半導体産業をみてきた東京理科大大学院教授の若林秀樹は指摘する。坂本もスマホ向けの可能性を力説したが、関係者を説得しきれなかった。 そもそもエルピーダの基盤の弱さは、電機各社の長期展望の欠如による経営判断の遅れが遠因だ。DRAM事業の苦戦から99年にNECと日立製作所が事業統合を決断。03年に三菱電機の事業も合流したが、市場シェアは一時5%を割った。統合も手間取り、業績回復に時間を要した。 対照的な韓国、SKハイニックスは急成長 エルピーダと対照的なのは韓国のSKハイニックスだ。前身のハイニックスは現代グループの半導体部門が、LGグループの製造会社を吸収し成立。過剰債務で経営難に陥りながら、金融機関の支援を受け再建を進める。SKテレコムの出資を得て投資競争を勝ち抜いた。04年にエルピーダと同規模だった時価総額は17倍に膨らんでいる。 ハイニックスの再編や金融機関による融資を先導したのは韓国政府だった。政府主導の金融支援は、後に海外からの相殺関税を招くことになるが、世界市場で勝ち残る政策目標は曲げず、リーマン危機後もウォン安を背景に競争力を高めている。「日米貿易摩擦の記憶が残る日本は産業政策で後手に回り、金融支援との連携も欠いていた」。若林はこう指摘する。 経済産業省は韓台中が国家的な企業育成に取り組んできたのに対し、日本企業の投資が縮小していったことを敗因の一つにあげる。「世界の半導体産業の潮流を見極めることができず、適切で十分な政策を講じてこなかった」。21年末の国会で経済産業相の萩生田光一はこう総括している。 各国・地域が半導体産業に兆円単位の支援策を準備するなか、日本も「民間事業支援の枠組みを越え、国家事業として取り組む」(経産省)方向へかじを切った。先端工場の誘致と、なお競争力を残す画像センサー、パワー半導体などの工場刷新を掲げ、台湾積体電路製造(TSMC)の誘致で成果も上げつつある。 エルピーダ破綻後も中国半導体企業の経営助言に携わるなど、海外の動向も知る坂本は疑問を拭えない。「韓国は10年、米国は5年スパンの支援パッケージだ。長期のロードマップをもってバックアップできるのか」 半導体産業では投資の膨張を背景に、製造と設計の担い手が分かれる水平分業が進んだ。貿易摩擦や深刻な需給逼迫は分業体制の副作用でもあった。各国・地域は製造拠点の確保に動き、投資競争は過熱する。ただ、好況の山の後には谷もやってくる。谷の中でも産業を支え続ける覚悟はあるのか。エルピーダの敗戦は、そう問いかけている。 =敬称略 (江口良輔)

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