2022年11月3日木曜日
トヨタの世界生産計画、920万台に下方修正…半導体不足の「逆風」も過去最高は維持
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221103-OYT1T50079/
トヨタ自動車は2022年度の世界生産計画をトヨタ、レクサス両ブランドで920万台に修正した。世界的な半導体不足を受けて50万台引き下げたが、過去最高になる。取り巻く環境は厳しいものの、部品メーカーと連携して、生産の遅れを挽回するだけでなく、中長期的な競争力の底上げを図る。(佐藤一輝)
「作りたくても」
新しい生産計画では、国内は従来より22万台少ない278万台、海外は28万台少ない642万台とした。955万台にすることも検討したが、今後のリスクが読み切れないとして最終的に920万台に設定したという。これまでの最高は16年度の908万台で、6年ぶりに上回る。
最大のネックになった半導体は、ハンドル操作や窓の開閉などに使われており、一つでも欠ければ車は作れない。国内はレクサスなど、半導体を多く使う高級車の比率が高く、海外より影響が大きくなるとした。トヨタの中村好男・生産副本部長は1日の決算記者会見で、中国・上海でのロックダウン(都市封鎖)や各地の自然災害にも言及し、「予期せぬ事象が重なり、作りたくても作れない状況になった。悩みながら920万台という数字を絞り出した」と説明した。
国内が下支え
国内生産は、トヨタが競争力を維持する目安として掲げる「300万台」を割り込むが、収益を下支えしているのは、国内工場だ。
国内で生産された車のうち、約6割は輸出されており、急速に円安が進む中、輸出の採算は改善していることが主な理由だ。22年9月中間連結決算で、本業のもうけを示す営業利益を所在地別にみると、日本は約8600億円の黒字で、トヨタ全体(1兆1414億円)の大半を占めた。トヨタは円高に見舞われていた時期でも、生産基盤を死守してきたが、円安局面で奏功した格好だ。
オンラインで記者会見するトヨタの経営幹部ら
トヨタの近健太副社長は「円安だけでなく、サプライヤー(部品メーカー)を含めて、国内の製造業の競争力が高いのは事実。日本でたくさん作れるようにすることは、現在の環境下では必要なことだ」と指摘した。
体質改善に力
今後は、原材料費の高騰に苦しむ部品メーカーを支援しながら、これまで取り組んできた「体質改善」にも力を入れる。
鉄やアルミニウムなど原材料の価格が上がった分は、トヨタへの販売価格に上乗せすることを認めており、部品メーカーにも同様の動きが広がるよう呼びかけている。
一方、売り上げと費用が等しくなる水準を示す「損益分岐台数」は、リーマン・ショック直後で赤字決算だった09年3月期に比べて3割強、下がっている。それだけ競争力が上がっていることを示しており、原価を抑えながら品質を高める取り組みも続ける。
熊倉和生・調達本部長は「仕入れ先とは共存共栄。一つの部品が欠ければ車は作れず、将来の競争力も落ちる。苦しい時だからこそ、中長期的にみて、みんなで力を合わせてやっていく」と語る。
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