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自民党は28日、石破首相(党総裁)が持論とするアジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設などを巡る議論を始めた。「石破カラー」の代表格とも言える主張には党内でも否定的な声が多く、今後は首相の顔を立てながら議論の落としどころを探ることになりそうだ。
「一朝一夕でできるような課題ではない。しっかり議論を積み上げていくことがまずは大切だ」
自民の小野寺政調会長は同日、党本部で開かれた「アジアにおける安全保障のあり方特命委員会」の役員会の初会合でそう述べ、時間をかけて話し合う考えを示した。
特命委は、首相が10月の第1次内閣発足後、小野寺氏に党内議論を指示したことを受けて新設された。委員長は小野寺氏自らが務め、有識者からの意見聴取などを重ねて、首相への提言をとりまとめる予定だ。
アジア版NATOの構想は、首相が20年来訴えてきた肝いりの施策だ。9月の党総裁選では「アジアで集団安全保障の仕組みを作っていくことは喫緊の課題だ」と強調していた。
だが、実現には集団的自衛権の全面行使を可能にする憲法改正などが必要とされ、中国も刺激しかねないとの指摘もあり、総裁選時から反対意見が出ていた。
首相はこうした声を意識し、就任以降は、党内に議論を委ねている。外遊時にも触れずに、持論を封印する慎重姿勢を貫く。
げたを預けられた形の自民は、来年1月に米国で発足するトランプ政権の行方も注視している。トランプ氏は第1次政権でNATOからの脱退をほのめかしたこともあるなど、多国間連携には否定的なためだ。
日米関係など現状の外交政策に影響を与えないよう、今後とりまとめる提言が総花的な内容になる可能性もある。この日の特命委でも、アジア版NATOなどに関する直接的な意見は出ず、アジアの安全保障を巡る包括的な議論に終始したという。党関係者からは「国防部会での議論で事足りた」と冷ややかな声も漏れる。小野寺氏は会合後、記者団に「アジア版NATOなどにフォーカスするというより、どのような安全保障が重要なのか方向を見いだしていければ」と語った。